新潟Crewのそんな1日。

基本知識のアウトプットに使う。あと日記!

教育論文「子どもの話を“聴かせていただく”ために」


1.はじめに

 子供に対して勉強の催促や、余計な口出しをするのは、親としての自分の期待や希望、思いなどを子どもに伝えたいと強く願っているということから起因している。しかし、親にこのような思惑があると、逆にどんな言葉でも子どもは拒絶したくなるものである。

 人は本来、自分で考え、自らをよい方向に導いていく力を持っている。一人ひとりの中には、「もっと成長したい」という自己実現欲求が備わっている。子どもにも、この自己実現欲求が自然に働けば、自らよい存在になろうとする。親に1つ1つ指摘されなくても、そのときに必要なことを、しっかり選択し、実行できる力を持っている。しかし親の叱咤激励は子供にとって大きなストレスとなり、成長を妨げる。ではどのようにしたらよいのか。それは子供を評価する云々よりも、ただ子供の話を受け止めて聴く、いわゆる傾聴の姿勢が大切となるのだ。

 


2.親と子の心を近づけるコミュニケーションとは

 父親が子供に対して進路の話をしっかりするが、子供の好きなテレビ番組や音楽などの趣味は知らないという。父親は進路の話をすることで心が通じ合っているものだと思っていたのだが、そうではない。こうした"結果"を求める対話的なかかわりでは心の中にあるものを何かの拍子で素直に出せる隙間がないのだ。隙間がないことで大人の意見は当て付けとしか思えなくなるのだ。

 子供と信頼関係を得るには、話をしている相手との心の触れ合いやそこから生まれる絆に起因される。会話に安心感が無ければこのような関係が築かれないのだ。

 


3.子供の話を本当に聞いているか

 アイコンタクトを取らない親子の会話では、子供は親が「興味がないのか」と察して不信感を抱くようになる。また子供の話を遮りテスト結果の報告などの確認作業をすると、子供は自信をなくして意見の主張をしなくなる。また子供が話してる時に説教することがある。それは親が子供の話を聞くのでなく、親が話をする立場に変わってしまっている。そうすると、子供は自分のことを否定されたように感じ、予想以上のダメージを受けるのだ。

 このような状態だと「子供が話を聴いてくれない」のではなく、親が本当の意味で心から接して来なかったせいである。思春期に話を聴かなくなるのは子供でなく親のせいなのだ。

 


4.子供の話を全て信じて聞いてみる

 ではどのようにするべきなのか。それはまず心を透明にすることだ。子供の話を全て信じる気持ちで聴く態度が必要となる。聴かせていただくという謙虚な姿勢だ。聞き手が話してに対して完全に共感することを最優先し、アドバイスや指示や分析をしないという立場である。相手の感情のみを優先させるのだ。親は子供に対する自分の願望や思いに振り回されず、シンプルに聴くのみでいいのだ。

 


5.親の価値観を押し付けない

 親世代の成功体験や理想を当てはめても、現代の子供にとってそれが正しいとは限らない。子供を変えたいなら、無理な価値観を押し付けずに、「今のままでいいんだよ」と優しい言葉をかけることで、子供は自然と変わっていくのだ。

 


6.子供から「うざい」と言われたら、そこを受け止める

 親がアドバイスをすれば子供にとってみれば自分の判断やペースを乱す邪魔な存在に感じられることがある。親の愛情や熱意は独りよがりになりかねない。子供から「うざい」と言われたら、それを受け止めるチャンスである。「自立を邪魔しないで欲しい」という裏のメッセージがあることを考えるべきである。

 


7.1つの言葉でもそれが示す本音は多様である

 子供が「嫌だ」と言ったらそれは「恥ずかしい」とか「不安」とか様々な気持ちが隠されている可能性がある。その時に子供の感情に寄り添い、自分が言った言葉が示す感情にしっくりくる言葉を返してもらえると、心が落ち着くのである。

 


8.子供の話を聴かせていただき親子の信頼関係を回復させる

 親から説教されているときは子供の中ではネガティブな気持ちに支配されている状態のため、子供が本来持っている力を存分に発揮できる状態ではない。どんな子供でもすぐに動かすことができる決定的な助言など存在しないのだ。最後は自分自身の判断で行動するからである。小学生では感情が優先され、中学生からだんだん理論的思考が形成されるのだが、まだまだ未熟な状態である。親子だからこそ真の信頼関係を築くことが必要なのだ。親は、子供に対する自分の思いや願いを伝えるよりも、まず子供の心と言葉をしっかりと受け止める必要があるのだ。そうすることで関係が発展されるのである。

 


9.話を聴いてあげるだけで子供はさらに親のことを好きになる

 聴いてもらった人は、聴いてくれた人のことを好きになる。自分の本音を話すということは、聴いてくれている人に心を許すということである。聴いてくれた相手は、その人にとって身近な存在になる。当然、その人のそばにいると、安心し気持ちも穏やかになる。つまり、親和効果がもたらされるのである。これが他人でも起こるのだから、親子間ではこの効果は絶大なものになる。子供にとって親の存在は無視できない。いつでも、親に認めてもらいたい、理解してもらいたい、自分の気持ちを受け止めてもらいたいと願っているのだ。

 


10.まとめ

 「子供を何とかしたい」という気持ちがあるなら、ここが正念場である。親が自分の子供にできることは3つのメッセージを伝え続けることだ。「あなたは今のままで大丈夫」という承認のメッセージ。「あなたはきっとこれから良くなる」という期待のメッセージ。「あなたならきっとできる」という応援のメッセージ。この承認と期待と応援。この3つのみの実践が親が子供に対して出来る最大で最高な行動なのだ。

 

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